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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド
「さて、早速始めましょうか? 『Yume』さん…… 」
そう言われて私は、「はいっ」と、色気の無い、元気一杯な返事をしてしまう。
元気印満載の、色気皆無女から、この人はどうやって『女の色香』を私から、引き出すのだろうか?
スタッフ、監督一同が、固唾を飲んで真紘さんを見守る。
口元を引き結んでいた真紘さんの口角が優しい形の笑顔を見せた。
「カメラマンさん、俺の事は撮らなくて良いですから、『Yume』さんだけを撮って下さい。彼女は、今からとても良い表情を見せますから、取り損ね無いようにね………… 」
そう指示した真紘さんに、驚いた表情を見せた合坂くん。
ふふっ…………。
でしょうね。
常に自分が中心でカメラに収まっていた合坂くんですもの(そうなんだろうなって、私にも解った)。
カメラに写らないなんて、有り得ない事ですものね。
でも、この人は逸れをやってのける。
この人は、完成予想図を頭の中で真っ先に巡らせて、仕事をする人だから。
私生活は、お姉ちゃんのせいで滅茶苦茶になってしまった人だけど、仕事に関しては、昔よりも誠実で熱心な人だから…………。
この仕事、必ず成功する。