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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド
それが有った為に、俺の人生急降下。
結芽をかっさらった俺に、亜依は恨みでも持って居たのだろうか?
ああ。
持っていたんだろうな、きっと。
あの日、気付けば俺も亜依も血だらけで、あの女を病院に搬送して貰った所までは記憶に有るが、その後の記憶と言えば、姉の顔を『認識』した後からだった。
その頃には、亜依も一命を取り留めていて(後日解った事だが、見た目程深い傷ではなく命に別状は無かったらしい)、俺はその間の記憶を失ってしまっていた。
姉が言うには、死人のようだったと。
思い出す必要も無いと、言われた。
それ程心が壊れたのだと。
自分を保つ為に、脳が起こした必然的な動きだったのだと、姉は医者に言われたと、そう言った。
記憶を無くすなんて、俺は、なんて
精神の弱い人間なんだろう。
結芽に依存して、彼女を苦しめて。
俺は本当に、クズだよな。
と、そんな事しか考えられなかった。
考えが堂々巡りしていると、酔っ払いの1人、合坂が言った。
「『Yume』さんと、『mahiro』さんってすんっごい仲良いですよね、カレカノさんなんでしょっ……… 」
酔っ払いの言う事など引き算で聞けと言うが、要らぬ考えで満たされていた俺の思考は、その言葉にまともに引っかかった。
さて、どうかな、なんて言って普段なら交わせたのに。
俺は、目の色を深い色に変えて突然、合坂の胸ぐらに掴み掛かってしまった。