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新月の闇 満月の光
第8章 夢一夜
鍵が開く音。
扉が開く気配。
「ありがとう」と、言う簡潔な言葉と声。
柔らかな布地と、身体が沈む振動。
其処で私は、半分寝ぼけた声を上げた。
「此処、どこ? 」
多分、ホテル。
分かっているけど、聞いてみた。
「目的地のホテル」
簡潔な答え。
少し離れた所から近寄って来る衣擦れの音。
「水だ。飲めるか? 」
「うん。欲しい………… 」
ベッドに横たわる私を抱き起こしてくれて、水が注がれたグラスを渡された。
喉を通る澄んだ水の冷たさが、酔いと眠気を覚ます。
覚醒した私が見た物は、広いリビングにふかふかなグレーの絨毯。
ベッドだと思ってた場所は、なんと、ソファーでした。
何という寝心地の良さなのでしょう(エへ、とあるテレビ番組風に呟いてみました)。
「うわぁ…………。綺麗………… 」
思わず口を付いて出たのは、感嘆の声。
床まで有る嵌め殺しの窓から下1/3にキラキラと輝く星のような光。
空では無く、地上に光る星。
結芽は思わず窓際まで歩み寄って遥か下に有る地上の星を見詰めた。