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Vesica Pisces
第9章 太陽は静寂を焦がす
大口でがつがつとカレーを頬張る透を見て居るだけでにやけてしまう。

「見過ぎだろ、なに、食いたいの?」

スプーンに一掬いのカレーを口元まで運ばれて、一瞬躊躇ったけれどスパイシーな香りにつられて頬張った。

『美味し…っ!辛いー』

ひりひりする舌を鎮めるためにペットボトルの水を一気に飲む。

透はしてやったり顔で頬杖をついてニヤニヤと笑っていた。

食事を平らげ、お風呂に順番に入る。

既にお風呂を終えていた透は窓辺で電話をしていた。

雰囲気から何となくいい話ではなさそうだ。

髪を乾かしベッドに座って時間を持て余す。

次はいつ帰ってくるのだろう。

電話をしている透の横顔を見つめながらそんな事を考える。

住んでる所は知っているけれど、部屋は見たことがない。

好きな食べ物は?足のサイズは?シャワー派?好きな色は?和食派か洋食派か?コーヒーそれとも紅茶?ビールか焼酎か?甘いものは好き?好きな香りは?パジャマ着る?メールは好き?映画館、家でレンタル?手は繋ぎたい?

聞きたいことは山ほどあるのに、時間を埋めてくれる筈の距離も、距離を埋めてくれる筈の時間も全然足らない。

「電話、終わった」
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