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Vesica Pisces
第9章 太陽は静寂を焦がす
ベッドの反対側に潜り込んだ透が、重なり合ったクッションに凭れかかる。

くんっと腕を引っ張られて透の肩に頭を載せた。

「考えるくらいなら聞けよ、重いとかそんなのねーから」

顔に書いてあったのかと思うくらい透はお見通しだった。

『誕生日いつ?』

「6月6日」

『靴のサイズは?』

「28」

『好きな食べ物は?』

「カレー」

『カレー?だからさっき頼んだの?』

「カレーは毎日でもいい、どこで食ってもカレーはそこそこまともなのが出てくる」

『どこでもって、海外でも?』

「アマゾンの奥地でも」

透の手がうねうねとへびを模すと、ふふっと笑いが漏れる。

『じゃあ、嫌いな食べ物』

「豆腐」

思いがけない返答に笑みを隠せない。

「お前が聞くからだろーが」

グイグイと体ごと押されても、じゃれ合っている気がして嬉しいだけだ。

「敬語も禁止だからな、いちいち丁寧なのキライ」

うんと小さく頷いて、些細なことまで質問は続いた。

「お前寝なくていいの?明日も仕事だろ?俺は機内で寝るからいーけど」

夜中1時を回っていたけれど、寝るなんて勿体無かった。

「もう寝ろ」

強制的に布団を掛けられると、あっという間に瞼は重くなってしまった。

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