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Vesica Pisces
第9章 太陽は静寂を焦がす
「おお、会う時が楽しみだなぁ」

「でしょ?私もよ」

それでも受け入れてくれる両親に救われる。

「親父もお袋も伽耶に甘すぎるんだよ!」

昌樹だけはぶつくさと文句を垂れていた。

今朝別れたばかりなのにもう会える日までを指折り数えている。

部屋に戻るとスマホを手に取る。

来ているメールはなく、送るメールもない。

仕事をして帰って来るだけの日々と、透はきっと海の向こうでトレーニングに明け暮れている日々。

するとメールが来る。

透からのメールは案の定、練習風景だった。

ヘルメットを被って、チームメイト数人が写り込んでいる。

チームメイトは満面の笑顔なのに、透はいかにもウザそうに眉をひそめている。

“もう少しやったらご飯食べに行く、いつものメンバー”

あとはお風呂に入るだけの自分とは全然違う生活の透。

“私はご飯食べたよ、のんびり中”

メールはそれきりだった。

平凡な毎日、つまらなくもなければ、凄く充実しているわけでもない。

透ほど誰かに必要とされているわけでもない。

透ほど夢中になるものも持っていない。

透は自分のどこを好きになったのだろう。

そして、自分は透のどこをどう好きなのだろう。
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