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Vesica Pisces
第9章 太陽は静寂を焦がす
朝のランニングを済ませて戻ってくると、着信表示は嘉登だった。

「暇人!」

開口一番そう告げると電話の向こうではふふっと意味深な笑い。

「ありがとう、嘉登くん、君は僕のキューピッドだ、だろ?」

「切るぞ」

「伽耶ちゃんに悪い虫がついても教えてやらねーぞ」

含み笑いで痛いところを突いてくるのは嘉登の十八番だ。

「伽耶ちゃん喜んでた?」

「知らね」

「じゃあ直で聞くしかねーな」

「聞かなくていい、もう俺のだから」

ふーんと鼻で笑ってなんて言っただの、どこまでモノにしただのよく喋る嘉登に、尋ねたいことは一つあった。

「…俺が…っていつから気付いてたんだよ?」

「ん?んー…伽耶ちゃんと知り合って、3回目の食事のメール送ったくらいから、かな?」

「は?そんな時会ってねーし、何でだよ」

「メールの返し、急に遅くなった」

「関係ねーし」

「いーや、明らかに遅くなったし返さなくなった、伽耶ちゃんが写ってる時に限ってね、確信したのはBMXの時だな、バレバレだっつーの」

嘉登の声は弾んでいるのに比例してイラついた。

「焚き付けてやってんのに、全然動かないからマジで貰おうかと思ったぞ」

そのセリフは半分本気じゃないのか?
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