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Vesica Pisces
第12章 太陽は静寂を愁う
そんな子供だまし、通用しねーから。

片手じゃ話せねーだろ。

心とは裏腹に緩む口元を隠しながら、頷く伽耶を横目に猛が早く帰る事だけを願った。

コーヒーだけの猛は、伽耶がサンドイッチを平らげたのを見届けるように席を立った。

伽耶の見送りを断ると、猛は視線だけで玄関へと促した。

「お前には勿体無いくらいきちんとしたお嬢さんだな」

「うっせ…」

革靴を履き終えた猛は、玄関のドアに手をかけてからふと振り向いた。

「今夜から一週間ほど滞在するからな」

げっ…。

「そう喜ぶな、彼女はお前と違って会社勤めだからな、そうそう泊まっていられないだろう?せいぜい夕方まで楽しむんだな」

全部見透かされたのが無性にムカついて、更に伽耶の事を理解した口ぶりの猛を思いっきり睨んでやった。

追い出す様に玄関から締め出すと、さっさとリビングに戻った。

洗い物をしていた伽耶をソファーからじっと見つめてみる。

今一緒に居たいだけ。

あの言葉がなんか引っかかる。

同じ気持ちなのに何かが違う、その何かがわからなくて伽耶を見つめる。

『どうかしたの?』

「別にー」

伽耶は濡れた手を拭くと隣に座った。
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