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Vesica Pisces
第12章 太陽は静寂を愁う
店に入って直ぐ声を掛けてきた店員に予約の名前を告げると、奥の個室に案内された。
とっくに始まっていた宴会。
店員に生中を頼むと空いてる席に座った。
「おっせーよ、透」
「うるせっ、嘉登に言え」
練習を終えてメールを確認したのが今から小一時間前だが、嘉登がメールをよこしたのもその五分前くらいだった。
当の本人はただただ笑っている。
「久しぶり」
そう言って前に座ったのは懐かしい顔。
「元気そーじゃん、結婚おめでと」
グラスを合わせたのはかつての戦友。
結婚したのは仲間伝で聞いていたけれど、FMXの世界では最近名前を聞いていなかった。
「最近なにしてんの?」
「まあ、バイクの営業…かな」
視線を合わせるとそいつは口の端だけを上げてみせた。
「…あ、俺ね、子供産まれたんだわ、ほら」
スマホに写し出されたのはちょこんと座ったあどけない表情を見せる女の子。
スライドすればその子を抱いている女の人が満面の笑顔を浮かべている。
「可愛いっしょ?」
「お前に似ず、な」
聞けば子供が産まれた後にFMXを辞めたらしい。
「ランプに立った時、恐いと思ったんだ、初めて…恐いって」
何で辞めたの返事はそれだった。
とっくに始まっていた宴会。
店員に生中を頼むと空いてる席に座った。
「おっせーよ、透」
「うるせっ、嘉登に言え」
練習を終えてメールを確認したのが今から小一時間前だが、嘉登がメールをよこしたのもその五分前くらいだった。
当の本人はただただ笑っている。
「久しぶり」
そう言って前に座ったのは懐かしい顔。
「元気そーじゃん、結婚おめでと」
グラスを合わせたのはかつての戦友。
結婚したのは仲間伝で聞いていたけれど、FMXの世界では最近名前を聞いていなかった。
「最近なにしてんの?」
「まあ、バイクの営業…かな」
視線を合わせるとそいつは口の端だけを上げてみせた。
「…あ、俺ね、子供産まれたんだわ、ほら」
スマホに写し出されたのはちょこんと座ったあどけない表情を見せる女の子。
スライドすればその子を抱いている女の人が満面の笑顔を浮かべている。
「可愛いっしょ?」
「お前に似ず、な」
聞けば子供が産まれた後にFMXを辞めたらしい。
「ランプに立った時、恐いと思ったんだ、初めて…恐いって」
何で辞めたの返事はそれだった。