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Vesica Pisces
第12章 太陽は静寂を愁う
「もしこのジャンプで失敗して死んだら、嫁と子供はどうなるのかって思ったら、恐くて飛び出せなくなった…ダッセェよな、何だよ今更怖いって」

自嘲する眼の前のこいつをじっと見つめた。

「お前が活躍してるのを見てさ、スッゲー嬉しい!応援してるからな!!」

うんと頷いて見せると、やっと心からの笑顔を浮かべた。

爽やかな風が酔って火照った頬を冷まして抜けて行く。

「猛さんはいつまでこっちにいるんだっけ?」

「明後日」

隣を歩く嘉登も酔っているのだろう、時々鼻歌らしきものが聴こえてくる。

「伽耶ちゃんとは上手くいってんの?」

「明日会う」

「そりゃ良かった」

「そっちは?」

「俺?俺は定位置キープだよ」

「それでいいわけ?」

「いいよ」

嘉登は笑顔を浮かべながら、時々目を閉じる。

当たり前の様に同じ家に帰り、嘉登はゲストルームのベッドで眠る。

部屋に戻ってメールに目を通すと、ありえないメールの数とは裏腹に、伽耶のフォルダにはたった2通しか届いていなかった。

“飲み会楽しんでね、嘉登さんに宜しく”

“もう寝るね、気をつけて帰ってね”

俺だけ心配してりゃいーのに。
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