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Vesica Pisces
第12章 太陽は静寂を愁う
透は両親に後で送りますとだけ告げてタクシーを見送った。

昌樹も渋々とだが、猛の手前何も言わなかった。

「勝手なことするな」

握られた手ごと背後に置いて、猛と向き合う透。

「お前がこっちにいる今と俺がこっちにいる今日みたいな日なんて、そうそうあるものじゃ無いだろう」

握った手が強張る。

「堅苦しく考えるな、お前の仕事はなかなか理解されにくいんだ、彼女と長く付き合いたいなら周りの理解を得る事も大事だ」

「こいつが解ってくれればそれでいい」

「彼女にも理解してくれている誰かが必要だ」

「俺がいる」

「お前の事を相談出来る誰かだ」

「いらねーよ!!」

張り詰めた空気と、肩越しに見える猛の険しい表情が良い話ではないのだと告げていた。

「…と、る…?」

知りたい、二人の会話を。

透の口にした言葉を。

そっと手を引いてみたけれど、透は猛を見据えたまま微動だにしない。

「お前はお前が思うように生きればいい、だが、彼女はお前の様には生きられない、溝が出来れば深まる一方だ」

「そんなことお前に言われたくねーよ!」

猛の唇を読めば、心配からくるそれだとわかる。




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