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Vesica Pisces
第13章 太陽は静寂を零す
透は食事はやっぱり日本が美味しいと、自分のを平らげた後横取りまでした。

「さ、帰ろ」

満腹になった透は店を出てこちらを伺う。

『帰る、よ?』

「あ、そ」

そう言いながら一歩を踏み出さない透。

『帰ろ』

「…さっさとそう言えばいいんですー」

まっすぐ前だけを見つめて歩き出す透の横顔が好きだ。

手を繋いで夜風に吹かれる。

1メートルずれた同じ景色を見て歩くこの時間が幸せだった。

透の家が見えてくると、不意に透が立ち止まった。

『どうしたの?』

「…最悪」

地下のリビングから漏れる灯に透は自らの家に背を向けた。

「どーせ嘉登だろ、ちょっと遠回り」

当て所なく歩を進める透の手を引いて、道路脇で足を止めさせた。

『疲れてるでしょ?家でゆっくりした方が良いんじゃない?』

良かれと思って言ったけれど、透の表情は明らかに不愉快だった。

「疲れとは別問題なんだけど」

斜め上を見上げてはぁ…とため息をつく透、下がってきた瞳がすっと細められると透の腕に後頭部を引き寄せられる。

夜道といえど街灯の明かりは点々と灯っていて、いつ誰が通るとも限らない其処で逃げられないキス。
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