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Vesica Pisces
第13章 太陽は静寂を零す
こんなところで誰かに見られたらという後ろめたい気持ちより、透に求められる優越感の方が遥かに大きくなっていた。

足りなかったのは透の温もり。

「…っは、ぁ…」

窒息しそうな程に長いキス。

零れた吐息を掬い上げる様に何度も角度を変えてキスは続く。

後頭部に回っていた手は今は頬を包んでいて、蕩け始めている視界に透の笑顔が霞んで見える。

「そんな顔すると、ここで襲うぞ」

「…っ…」

何とか頭を振ってそれは拒否するけれど、まだ透不足は解消されそうにない。

「やっぱあいつらムカつく…追い出すか」

頬と唇にちゅっとキスを落とすと、仕方なく家へと戻って行く。

遠回りはほんの15分ほどで電気は煌々と点いたままだった。

「お、おかえりー!!」

「お邪魔してるー」

嘉登と未知だけだと思って居たそこには、万里と和可菜まで合流していた。

「透くん、舌打ちでかすぎ」

万里に指摘された透は不機嫌を露わにして、それでも同じテーブルを囲んだ。

和可菜がごめんねと手を合わせてきたのを慌てて否定する。

お酒を飲み始めれば、仲のいい友人との語らいに透は満面の笑顔で饒舌になっていった。


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