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Vesica Pisces
第14章 太陽は静寂を切り裂く
『未知、良かったね!嘉登さんも』

「好きだった男が他の女と付き合うのを目の前で見ても、そう思うもん?」

笑みで細まっていた瞳が丸く変わったけれど、まさか知らなかったと思ってた?

「写真からダダ漏れ」

『…っつ…?』

「秋くらい?嘉登が送ってくる写真の中で、嘉登ラブって顔に書いてあった」

良くも悪くも顔にでる伽耶。

「正直なやつ」

両頬を摘んでやると、伽耶は申し訳なさそうに眉を下げた。

『透はいつから私の事好きだったの?』

頬を摩りながら、問いかける伽耶。

「いつの間にか」

そんなのこっちが聞きたい。

いつから俺ん中に存在してたんだよ。

いつまで此処に居てくれんの?

『然くんのレースの日、見に来てもいい?』

軽く頷いて見せると伽耶はすぐ満面の笑みを浮かべた。

「伽耶の笑顔、好きだよ」

真っ直ぐ伝えれば、顔を真っ赤にして照れながら、それでも私もとまた微笑む。

玄関のドアが閉じたと同時に、その小さな身体を抱きしめた。

回された手が背中を撫でると、抱きしめられてるのは俺の方だと思った。

「…何でこんなに好きなんだよ」

背中に呟いても返事などない、でもそれで良い。
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