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Vesica Pisces
第14章 太陽は静寂を切り裂く
国際電話をかけながら、視線はテレビを見続けた。
コンディションの悪さや、失敗が次の選手へと尾を引いていく。
流れは悪い。
派手に転倒した選手が担架で運ばれて行く傍に、女性が涙ながらに付き添う。
“もうこんな馬鹿な事に命を賭けるのは辞めて”
確かにテレビの中の彼女はそう言っていた。
「もしもし、あぁ…うん、そっか…ならいいわ…」
吉信はあっけらかんと然の無事を語っていたけれど、彼女の涙が伽耶にダブって気分は酷く曇っていた。
「然は大した事ないって」
ソファーの側に立ってそれを告げると、皆安堵の表情を見せた。
「…今夜はもう帰れ」
「ま、あ、そうだな、じゃあ帰る?」
未知と和可菜はすんなり支度したけれど、伽耶だけはなかなか立ち上がらない。
「帰れって」
伽耶は唇を噛んで、何か言いたげに瞳を揺らした。
「…頼むから、帰って…」
嘉登に押しつける様に伽耶を家から追い出した。
窓から、4人がタクシーに乗って去って行くのを見送るとベッドに身体を投げ出した。
「泣くなよ、俺のことで」
伽耶の涙なんて見たくない。
少なくとも自分の事で泣いてる伽耶なんて見たくない。
辛いだけだ。
自分が痛いより、ずっとツライ。
コンディションの悪さや、失敗が次の選手へと尾を引いていく。
流れは悪い。
派手に転倒した選手が担架で運ばれて行く傍に、女性が涙ながらに付き添う。
“もうこんな馬鹿な事に命を賭けるのは辞めて”
確かにテレビの中の彼女はそう言っていた。
「もしもし、あぁ…うん、そっか…ならいいわ…」
吉信はあっけらかんと然の無事を語っていたけれど、彼女の涙が伽耶にダブって気分は酷く曇っていた。
「然は大した事ないって」
ソファーの側に立ってそれを告げると、皆安堵の表情を見せた。
「…今夜はもう帰れ」
「ま、あ、そうだな、じゃあ帰る?」
未知と和可菜はすんなり支度したけれど、伽耶だけはなかなか立ち上がらない。
「帰れって」
伽耶は唇を噛んで、何か言いたげに瞳を揺らした。
「…頼むから、帰って…」
嘉登に押しつける様に伽耶を家から追い出した。
窓から、4人がタクシーに乗って去って行くのを見送るとベッドに身体を投げ出した。
「泣くなよ、俺のことで」
伽耶の涙なんて見たくない。
少なくとも自分の事で泣いてる伽耶なんて見たくない。
辛いだけだ。
自分が痛いより、ずっとツライ。