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Vesica Pisces
第15章 太陽は静寂を超える
グイッと腕を引っ張られて、しっかりと胸に抱きとめられた。

僅かでも温かいマグを持っていたからか、温かい手のひらが頬を包んで視線を合わせた。

「俺あんま執着心とか無いんだわ、でもお前は…お前だけは無理、誰にも渡したく無いし、俺以外の誰かのものになるなんて考えたくも無い…もう、さ、何なのお前って」

真っ直ぐ見つめられてそんな事を言われて、顔が火照るのが分かった。

「俺だけ見てりゃいーじゃん」

目を閉じておでこをこつんと当ててくる。

透の背中に腕を回してぎゅっと抱きつくと、目を開けた透は頬を包んでいた指先で唇を撫でた。

「余所見すんなって…マジで」

それは気恥ずかしさから目を伏せた今の事なのか、それとも有馬さんや英さんに向けた事なのかわからなかったけれど、透なりの嫉妬なのだと思えば嬉しくて、緩む頬は透の手に包まれたままだった。

余所見なんてしないと伝えたいのに、この体勢では手話も使えない。

ただただ回した手に力を込めるしかなかった。

額に唇が押し付けられて上を向くと、透の唇がゆっくりと重なった。

柔らかい透の口唇が薄く開いて、熱い舌が割り入ってくる。
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