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Vesica Pisces
第18章 太陽は静寂を誘う
トレヴァーは眉をあげて笑う。

「足が一本しかなくても、お前に負ける気はしねーけど」

「いつまでも上にいないで、そろそろ後輩を鍛えた方が良いんじゃない?」

こんなガキの粋がった台詞なんて、彼は鼻で笑うのだろう。

トレヴァーには妻子がいた。

「彼女は怪我の後、復帰することについて何も言わなかった?」

「ああ、言ったよ、やっと戻って来たのね、私のヒーローってね!彼女にとって誰よりも一番カッコいい男でありたい、お前は違うのか?」

あぁ、そうだ。

伽耶もそう言ってくれる気がする。

そして、伽耶にとって俺が一番の男でありたい。

迷いと言うほどのものではなかったけれど、霧が晴れたように答えが見える。

「え?トオル、結婚するの?」

「ああ」

間髪入れない答えに、ブリュノはあんぐりと口を開けていたけれど、すぐさま満面の笑みを浮かべた。

「今日は泊まっていけ、こんな良い夜はない」

トレヴァーの妻の手料理を囲んで、3歳になる娘のクロエはずっと俺の膝の上にいて、我慢の限界を超えたトレヴァーが手を伸ばすも、あっさりとそれを拒否した。

「トオルのおよめさんになるの」

クロエの発言を喜んだのは妻とブリュノだけだった。

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