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Vesica Pisces
第20章 太陽の静寂
「え、何泣かせてんの?」

嬉しくて溢れた涙に、透は眉間に皺を寄せた。

「慰めていい?」

「嘉登…お前ね、伽耶の半径10センチに接近禁止令!」

松葉杖を使って、嘉登の脛を突く透に笑ってしまうけれど、こうやって透に出会えたのも嘉登のお陰だ。

ため息を吐きながらベッドに腰掛ける透。

「じゃぁ、俺はそろそろ行くわ、伽耶ちゃん、またお願いね」

頷く私に手を振って、嘉登は帰って行った。

『いつまで拗ねてるの?』

「べーつにー、嘉登の事を好きだったのは過去ですからー、ぜーんぜん気にしてませんけどー、何の話で泣かされてんのかなーなーんてー」

『透が立会い間に合わなかったら、未知と嘉登さんが立会ってくれるって』

「は?バカじゃん」

『さすがに海外からじゃ間に合わないよ』

「うっせ、そんな頃に行かねーよ」

ベッドに仰向けになって、空いてるスペースに促されるまま座る。

「チビが産まれてもさ…お前の1番はー…俺だよな?」

唇を尖らせて、いつもの強気な雰囲気は影を潜めて、そんなセリフを吐く。

どこまでもズルくて可愛い人だ。

『子供が1番だよ』

あ、舌打ちした。

『透は特別』

太陽は静かに笑った。
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