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Vesica Pisces
第20章 太陽の静寂
静寂が訪れる。

そこに立つと全て音が消えて、一本のラインが姿を現わす。

静寂に包まれて風を切れば、いつだって最高で最上の快楽が待っている。

そしてその先には君が笑って待っている。

いつだって帰りたいと、1番で君のところへ帰りたいと強く思うよ。



下半身に重い振動を感じると、大歓声に包まれた。

高揚する気持ちに心臓が震えている。

客席を見渡して、その笑顔を見つける。

バイクを預けて、汗をぬぐいながら側へ駆け寄った。

「ちゃんと見てた?」

『最高にかっこよかった』

ストレートに褒められるとやっぱニヤける。

「トール、もう一回」

主催者のジャリルに言われたんじゃしょうがない。

ジャリルの母国で開催されたFMXのショーはスポンサーであるジャリル直々に招待されて、俺だけではなく家族、友人まで宿泊費はタダ。

長旅で負担になるだろう今回は、伽耶たちのためにプライベートジェットまでチャーターしてくれたのだ。

「やるのはいいけど、そいつにキスするとかヤメろよ、見えてんだよ」

ジャリルの胸に抱かれて眠るのはもうすぐ1歳の誕生日を迎える俺の娘。

丸く膨らんだ頬に髭面を寄せるジャリルをひと睨みした。
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