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Vesica Pisces
第4章 太陽は静寂を開く
小さなヒュッテには手作りのオーナメントとレープクーヘンが並んでいた。

小さなスプーンのつぼ部分には僅かながらのロウが垂らされており、キャンドルを模しているらしく、また柄尻の穴には真っ赤なベルベットのリボンが結んであった。

それを見たときに浮かんだのは伽耶。

「これちょうだい」

姉弟はニコッと笑って紙袋にそれを入れ、小さなサシェも一緒に入れてくれた。

透は代金とは別にココア代を2人に手渡した。

「メリークリスマス」

空きのあった夕方の飛行機に乗り込んで11時間後を楽しみに眠りについた。

早朝の空港から家へと電車に揺られる。

朝陽が眩しすぎて目に痛い。

親代わりの叔父である桐生 吉信に帰郷のメールを入れ、都心へと向かう人波に逆らって歩いた。

約一ヶ月ぶりの我が家は相変わらず何処か他人の雰囲気を残していて、唯一変わらない自分の部屋に入るとベッドにダイブした。

飛行機内で散々寝ていたけれど、自分のベッドは別物で身体がゆっくりと沈んでいく。

バックパックの中身をベッドに広げるとシャワーを浴びにバスルームへと向かった。

さっぱりして出てくるとパスポートをいつもの場所にしまった。
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