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Vesica Pisces
第6章 太陽は静寂を引く
「透…?起きた…?」

顔を上げたのは寝ぼけ眼の嘉登。

「いや、もう一回寝るわ」

立ち上がるなと伽耶の頭に手を乗せた。

ふんわりと指が埋もれる柔らかい髪に、胸がザワつく。

ソファーに突っ伏した嘉登を確認して、伽耶を部屋に戻す。

ドアはそのまま閉まった。

近づいてくる女は独占欲を剥き出しにして、やたら支配したがる。

伽耶は何も求めてこない。

だから執着してるだけなのか。

ラグに寝転がってスマホを操作し、北海道行きの航空券の空きを探した。

太陽が昇ると渋々目を覚まし、家に帰る者、仕事に行く者。

「嘉にぃ、送って」

未知に言われるがままにガレージにある車に未知と伽耶、助手席に透が乗り込んだ。

嘉登の運転で先に未知を下ろす。

「あとひと頑張りで年末年始休暇だね」

『はい』

「お正月は家でゆっくり?」

『毎年そうですね』

「透は?」

「最後でいいから、空港まで送って」

バックミラーの端に伽耶が見える。

「今度はいつまで日本に居んの?」

「来月の中旬の予定」

ぶっきら棒に返すのは嘉登への当てつけ。

窓の外を見つめて、1秒でも早くこの空間から解放されたかった。
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