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Vesica Pisces
第6章 太陽は静寂を引く
住宅街の一画で車を停めた。

『ありがとございました』

頭を下げて門扉を開ける。

玄関前でもう一度振り返るとまた頭を下げた。

ひらひらと手を振って応える嘉登を横目に、何も反応せず顔を逸らした。

「仲良くなったんじゃねぇの?」

車を出して空港線になると不意に口を開く嘉登。

「は?誰と?」

「伽耶ちゃんと!この前プレゼント選びについて来たのは仲良くなる為だったんじゃねえのかよ」

「俺が仲良くなっていいのかよ」

「いいよ?」

「はぁ?!マジかよ…」

余裕綽々でニヤリと口角を上げるその横顔が憎たらしい。

ターミナルまで見送りについて来た嘉登は、搭乗の手続きをしてる間に吉信への手土産を買っておいてくれた。

こういう気配りを忘れない所は本当に尊敬するし、見習うべきところだけれど。

「行くわ」

デイパックを背負って搭乗口へと向かう。

「年明けたら、行く前にまた集まろうや」

「だな」

「透!俺が伽耶ちゃんにした大事な話、気にならねぇの?」

「…関係ねぇし」

「ふーん、じゃあ気をつけてな!気になるんだったら言えよ、お前にだけ特別に教えてやるよ」

指先だけを振るとさっさと踵を返して帰って行く嘉登を見送った。
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