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Vesica Pisces
第6章 太陽は静寂を引く
一面の銀世界と見慣れた街並み。

最寄りのバス停から30分近く歩き続けてやっと屋根が見えた。

雪を巻き上げながら駆け寄ってくる影が二つ。

「ランプ!!トゥイーク!!」

二匹のシベリアンハスキーは透めがけて飛びついて来て、そのまま雪に埋もれた。

ハッハッと真っ白な息を綿菓子のように吐き出し、透の顔を舐めまくる二匹。

「おお、帰ったか」

ゴツい体をゆったりと動かして近づいて来た桐生 吉信。

「誰?」

「然だ、西原 然、今シーズンから預かってんだ」

吉信の隣に立ち、金髪に染めた頭をぺこっと下げる然。

「三年前にお前のレッスンを習ってたんだぞ、覚えてないか?初日の最後にキャブ180をやってのけたガキが居たのを」

生意気そうな面構えを何度も見返すけれど、チラリとも思い出せない。

その日は二匹と共にゲレンデを見に行き、然とパウダースノーを満喫した。

翌日からは吉信のレッスンに通う子供達に、飛び入りでコーチを務める。

「透?!本物っ!?」

プロのスノーボーダーを目指している子供ばかりで、教えるというよりは見て盗めのスタイルでも、吸収しやすい子供はそれなりに上達していく。

子供達を教えた後は自分の練習だった。
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