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Vesica Pisces
第6章 太陽は静寂を引く
ゆっくり煮込んだおせち用の黒豆が出来上がったのはお昼過ぎ。

伽耶はふっくらと煮上がったつやつやの黒豆に微笑んで、部屋に戻りスマホのメールを開く。

メールが来ていたのは午前中の黒豆に掛り切りだった時間で、伽耶は急いで返事をし、そのまま母親の元へと下りていった。

「初詣?いいわよ、いってらっしゃい」

時間が迫り着替えて出て行こうとする伽耶を、玄関先で昌樹が呼び止めた。

「どこ行くんだよ?こんな時間から」

『初詣、お母さんには言ったよ?』

「誰と行くんだ?」

『…友達』

思わず視線を逸らしてしまう。

「伽耶!行くなとは言わない、でも俺にも言えない様な奴と行くのはやめろ」

『言えなくないよ!ただ…』

透との関係を聞かれると友達なのか、それ未満なのか。

「最近のお前、浮き沈みが激しいんだよ!また…っ!」

『もう大丈夫だから!!ほらもう家に入って!』

何とか笑顔を作る伽耶に昌樹はそれ以上何も言えず、押し返される様に家の中へと戻った。

溜息すら白く濁る夜。

「こんばんは」

透に会うともやもやした煙が一気に晴れて行く気がする。

助手席から見る夜の街は一層煌めいて見えた。
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