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Vesica Pisces
第7章 太陽は静寂を掴む
透に促されて隣に座る。

プルトップを開けるとほわっと湯気が立ち昇った。

『凄く綺麗でした!連れて来てくれてありがとうございます』

「あんだけ喜んでくれりゃ、連れて来た甲斐があるわ」

並んで海を見ながら、手の中の温もりだけが温度を失っていく。

「帰ろっか」

うんと頷くと、車まで随分と離れてしまった砂浜を戻っていく。

来た時と同じだけの距離を保って。

「腹減った」

言われてみれば夜中に焼きそばを食べたきりだ。

透は少し走って国道沿いのラーメン屋に入った。

二つ並んだラーメンを啜ると、懐かしく安定した醤油スープに思わず笑顔が溢れた。

「…ねみぃ…ちょっと寝ていい?」

ずっと運転していた透の申し出を無下に出来るわけがない。

透は後ろをフラットシートにすると、家に帰った時に載せたブランケットを広げた。

「起きてんの?」

『はい、どれくらいしたら起こしましょうか?』

しかめっ面で眉間に皺を刻むと透は指先だけで手招いた。

「お前も寝んの、はい、おやすみ」

ぐっと肩を抱かれてフラットシートに倒されると、ばさっとブランケットに包まれる。

目と鼻の先には透の胸板。
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