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Vesica Pisces
第7章 太陽は静寂を掴む
透の匂いに包まれると心臓が暴れる様に跳ねて、眠るどころではない。

そっと顔を上げると透は、こっちの気持ちなんて御構い無しに眠り込んでいた。

目を閉じると整いすぎてるくらい綺麗な顔。

長い睫毛に通った鼻筋、薄っすら開いた唇からは色香が漂う。

この唇とキスしたのかと思い返す。

顎のラインも、首筋も芸術品の様でどこまでも男のカタチをしていた。

スモークガラスの中で、徐々にドキドキを睡魔が追い払うとゆっくりと眠りへと落ちていった。

ぐらぐらと身体を揺すられる。

寝ぼけ眼をなんとかこじ開けると、そこには焦っている透がいた。

「お前、寝すぎ!!」

車のフロントにあるデジタル時計を見ると二時を回っていた。

助手席に座るよりも先に車は走り出していた。

夕暮れを先回りして家につく。

「謝らせて」

何度も必要ないと断ったのに透は玄関を潜った。

「こんな時間まで連れ回してすいませんでした」

昌樹だけが仏頂面で仁王立ち。

「いいのよ、この子もいい大人だもの、それよりこんな時間だもの、夕飯を一緒にどうかしら?」

「ありがとうございます、でも、これから仕事があるのでまた誘って下さい」

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