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Vesica Pisces
第7章 太陽は静寂を掴む
透は帰り際にもう一度頭を下げると車に戻っていく。

『仕事って』

「あー、七時からだから余裕」

車に乗り込む手を止めてふと振り返る透。

「…また、行く?」

『はい!』

また、次を予告してくれるのが嬉しい。

「嘉登抜きで、だけど?」

また嘉登が出てくる。

『嘉登さんが何で出てくるんですか?』

くっと息を詰まらせたのがわかる。

「…嘉登の事、好きなんだろ?」

ふいっと逸らされた瞳に哀しくなる。

『…違います、嘉登さんが好きなのは…未知です』

「は?」

『誰にも言わないでって言われたのに…言わないで下さいね?』

大事な二人だけの秘密だったのに、これ以上誤解されたくもない。

「大事な話って、それ?」

『?そうですよ、未知は彼氏が居るからあくまでお兄ちゃんとして側にいるつもりだからって…でも、なるべく側にいたいから協力して欲しいって頼まれたんです、何か?』

呆気にとられる透の目がくしゃと細められる。

「あっそ、じゃあ俺がお前のことモノにしていいんだな」

『え?』

「全力でいくからな」

ピンッとおでこを弾かれて、ヒリヒリする額を撫でているうちに透は走り去ってしまった。
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