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Vesica Pisces
第1章 太陽×静寂=99…
ニット帽子を外し、ウェアーの首元を開ける。

額には汗が滴って居た。

熱を持った手をぎゅっと握ったまま、少年は矢継ぎ早に質問した。

どうしたらそんなに高く跳べるのか。

どうしたらそんなに巧く回れるのか。

答える代わりに目の前でやってみせる。

少年が見たかったエアが目の前で次々に披露され、そのどれもが画面でみるより遥かに迫力のある完璧なものだった。

「いつか、いつかさ!僕もW杯に出るから!!」

「ぜってー負けねぇけどな!」

グシャッと頭を撫でると真っ白な息を吐いて、少年は満面の笑みを浮かべた。

ゲレンデのレストランで朝食を取りながら、メールをチェックする。

「お前さ、本当ヤル気にさせるの上手いよな」

「あん?」

スマホから視線を移すとエディは笑って告げる。

「さっきの子供とかさ、昨日の女もだし…何なのそのスキル」

「トオルに嘘はないからな」

「そんなんじゃない」

一通のメールを開く。

「ただ五年後くらいじゃ全然負ける気しないだけ」

ソティリオが横からスマホを覗いた。

「お?ヨシトじゃん、相変わらず人に埋れてんな」

男女比は同じくらいだけれど、画面いっぱいの端で笑う当人。
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