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Vesica Pisces
第8章 太陽は静寂に寄せる
ブーブーとサイドテーブルを揺らすスマホに手を伸ばす。

「もしもし…」

「おはよう、元気?」

「何時だと思ってんだよ」

電話の主は嘉登。

遮光カーテンの隙間からは朝陽が溢れていた。

しょうがなく身体を起こして、スマホはスピーカーに切り替えた。

「なぁ、お前伽耶ちゃんと付き合ってねーの?」

単刀直入に尋ねる嘉登に、口にしていたミネラルウォーターが気管に入って盛大にむせた。

「はあっ?なんだよそれ」

「いや、この前ばんちゃんと和可菜ちゃんのカレカノ祝賀会をしたんだけど、その時に伽耶ちゃんもお前と付き合ってるんじゃ無いのってきいたら…」

無言でスマホを見つめる眉間に皺が寄る。

「多分違うって言ってたから」

「はああっ?!それ、マジで言ってる?」

「大マジですよ」

抱きしめたのに。

会いたいって言って抱きしめたよな?彼奴も腕を回してた。

「お前にとっちゃ、ハグは挨拶だもんな」

どこまで嘉登に話したのか、知ってそうで明らかで無い口ぶりに苛々が再燃する。

「今度いつ帰ってくんの?」

「来月の頭」

「それはまた結構な期間が空くことで、じゃあな、寝てるとこ悪かったよ」

一方的に掻き回して、ブツッと電話は切れた。
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