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Vesica Pisces
第8章 太陽は静寂に寄せる
奥のエレベーターホールから出てくる伽耶を見つけて、慌てて電話を終わらせた。
隣には当たり前の様にあいつがいた。
「松重?知り合い?」
明らかに動揺している伽耶の腕を引き寄せる。
「知り合いじゃねえし」
『どうしてここにいるんですか?』
「お前が嘉登にわけわかんねーこと言うからだろうが、行くぞ」
こんな所にいたくない、1分だって惜しいのに。
歩き出そうとしたのを制止したのはあいつだった。
「待てって、彼女を泣かす様な真似はするな」
「は?あんた、こいつの何?」
『有馬さんは同じ部署の先輩で、今度…』
庇うような伽耶の説明にすら苛立ちを覚える。
関係を確かめる為に来たわけじゃない、寧ろ今はどうでもいいことだ。
「こいつを泣かせていいのは俺だけなんだよ、あんたはだめ」
それだけ吐き捨てるとその場を足早に離れる。
「傘」
伽耶は鞄から赤い折り畳み傘を開いた。
伽耶だけを傘の下に置いて、すっかり宵闇と雨に包まれた街を歩き出した。
最寄駅とは反対の、明日帰る空港までの利便性の高い路線の駅へと向かう。
交差点に差し掛かって、赤信号で足止めをくらった。
大きなため息は真っ白な綿の様に膨らんだ。
隣には当たり前の様にあいつがいた。
「松重?知り合い?」
明らかに動揺している伽耶の腕を引き寄せる。
「知り合いじゃねえし」
『どうしてここにいるんですか?』
「お前が嘉登にわけわかんねーこと言うからだろうが、行くぞ」
こんな所にいたくない、1分だって惜しいのに。
歩き出そうとしたのを制止したのはあいつだった。
「待てって、彼女を泣かす様な真似はするな」
「は?あんた、こいつの何?」
『有馬さんは同じ部署の先輩で、今度…』
庇うような伽耶の説明にすら苛立ちを覚える。
関係を確かめる為に来たわけじゃない、寧ろ今はどうでもいいことだ。
「こいつを泣かせていいのは俺だけなんだよ、あんたはだめ」
それだけ吐き捨てるとその場を足早に離れる。
「傘」
伽耶は鞄から赤い折り畳み傘を開いた。
伽耶だけを傘の下に置いて、すっかり宵闇と雨に包まれた街を歩き出した。
最寄駅とは反対の、明日帰る空港までの利便性の高い路線の駅へと向かう。
交差点に差し掛かって、赤信号で足止めをくらった。
大きなため息は真っ白な綿の様に膨らんだ。