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Vesica Pisces
第8章 太陽は静寂に寄せる
伽耶が傘をさし掛けてきた。

「お前さ、何なの?」

伽耶の表情が強張ったけれど、そんな事は構わない。

「付き合ってないって、何?」

『それは…わ、からなくて…透さんにとってあれは、海外じゃ当たり前の挨拶でしょう?』

「あのなぁ…っ、何で俺に直で確かめねーんだよ、何でそーゆー事を嘉登経由で聞かなきゃいけないわけ?」

『嘉登さんに…言ったわけじゃない…』

「俺に言わなきゃ誰に言っても同じなんだよ」

信号が青に変わっても二人だけはその場に立ち尽くしたままで。

「俺はあれで気持ち伝わったと思ってた、そうじゃなくても回りくどく確かめてくるなんて思ってねーし」

『どうやって?私のこと好きですかって聞くの?どういう種類の好きですかって?私、彼女ですよねって押し付けがましく確かめろって言うんですか?顔も見ずに表情もないメールで?』

震える伽耶の手と、涙が溜まる瞳。

『そんな大事なことをメールでなんて済ませたくないっ!ただでさえ聴こえないのに!!』

「聴こえないせいにすんな、メールなんて?メールしかないだろーが!!押し付けがましい?当たり前だ、聞きたいことを確かめるのにそんな事構ってられっか!!」

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