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Vesica Pisces
第8章 太陽は静寂に寄せる
俺の声だけが響く。
傘の柄を持つ伽耶の手が震えていた。
「俺の全部が欲しいと思えないお前に、俺が出来ることなんて何もねーよ」
時間は無情に過ぎる。
距離は変えられないし、無い物ねだりは意味がない。
俯いてしまった伽耶の足元に雫が溶けて行く。
点滅信号の横断歩道をふらりと歩き出す伽耶。
これ以上どうしろって言うんだ?
俺の言う通りにするなんて馬鹿げてる。
フードの端を露玉が転がって行く。
けたたましいクラクションの音にそちらを見れば、伽耶は俯いたまま赤信号の横断歩道をまだ渡っていた。
「ッチ」
駆け出して、伽耶の腕を取り横断歩道を渡りきった。
ゴシゴシと目元を拭う伽耶、足元に転がった傘をさし直して、伽耶の目の前に右手を翳した。
す き だ
ばっと勢いよく顔をあげた伽耶の目は見開いていて。
「これでわかったか、バーカ」
ボロっとまた涙が溢れて。
「これでお前、俺のだからな」
こくこくと何度も頷く伽耶の手に傘を返すと、目に付いたコンビニに一人で向かった。
「手だせ」
傘の柄を首に挟んで、右手を広げる伽耶。
買ってきた油性ペンで手のひらに書きなぐってやった。
〝透のものです〟
傘の柄を持つ伽耶の手が震えていた。
「俺の全部が欲しいと思えないお前に、俺が出来ることなんて何もねーよ」
時間は無情に過ぎる。
距離は変えられないし、無い物ねだりは意味がない。
俯いてしまった伽耶の足元に雫が溶けて行く。
点滅信号の横断歩道をふらりと歩き出す伽耶。
これ以上どうしろって言うんだ?
俺の言う通りにするなんて馬鹿げてる。
フードの端を露玉が転がって行く。
けたたましいクラクションの音にそちらを見れば、伽耶は俯いたまま赤信号の横断歩道をまだ渡っていた。
「ッチ」
駆け出して、伽耶の腕を取り横断歩道を渡りきった。
ゴシゴシと目元を拭う伽耶、足元に転がった傘をさし直して、伽耶の目の前に右手を翳した。
す き だ
ばっと勢いよく顔をあげた伽耶の目は見開いていて。
「これでわかったか、バーカ」
ボロっとまた涙が溢れて。
「これでお前、俺のだからな」
こくこくと何度も頷く伽耶の手に傘を返すと、目に付いたコンビニに一人で向かった。
「手だせ」
傘の柄を首に挟んで、右手を広げる伽耶。
買ってきた油性ペンで手のひらに書きなぐってやった。
〝透のものです〟