この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
Vesica Pisces
第8章 太陽は静寂に寄せる
俺の声だけが響く。

傘の柄を持つ伽耶の手が震えていた。

「俺の全部が欲しいと思えないお前に、俺が出来ることなんて何もねーよ」

時間は無情に過ぎる。

距離は変えられないし、無い物ねだりは意味がない。

俯いてしまった伽耶の足元に雫が溶けて行く。

点滅信号の横断歩道をふらりと歩き出す伽耶。

これ以上どうしろって言うんだ?

俺の言う通りにするなんて馬鹿げてる。

フードの端を露玉が転がって行く。

けたたましいクラクションの音にそちらを見れば、伽耶は俯いたまま赤信号の横断歩道をまだ渡っていた。

「ッチ」

駆け出して、伽耶の腕を取り横断歩道を渡りきった。

ゴシゴシと目元を拭う伽耶、足元に転がった傘をさし直して、伽耶の目の前に右手を翳した。

す き だ

ばっと勢いよく顔をあげた伽耶の目は見開いていて。

「これでわかったか、バーカ」

ボロっとまた涙が溢れて。

「これでお前、俺のだからな」

こくこくと何度も頷く伽耶の手に傘を返すと、目に付いたコンビニに一人で向かった。

「手だせ」

傘の柄を首に挟んで、右手を広げる伽耶。

買ってきた油性ペンで手のひらに書きなぐってやった。

〝透のものです〟
/252ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ