この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
Vesica Pisces
第8章 太陽は静寂に寄せる
音が無い世界になんて慣れてたはずだった。

音だけじゃなく、色も無くしてしまう。

凍てつくような雨の冷たさが、色を攫っていく。

全部を欲しいだなんて、言っていいのかな。

許されるんだろうか。

ふっと気配が離れて、透との距離がほんの数センチ離れただけ。

けれど、それは遥かな距離になる。

涙が浮かんで、もうそこには居られない。

雨に濡れて反射する横断歩道を歩き出した。

はっきりしないうちにこんなケンカをしてしまうなんて。

ぐんっと身体が前のめりになって、あっという間に横断歩道を渡りきっていた。

涙なんて呆れられる。

必死に拭うのに止まらない事にだんだん情けなくなって、やっぱり止まらない。

大粒の涙がぽたっと落ちて、少しだけ晴れた視界に大きな手がかざされる。

す き だ

顔を上げると透は唇を尖らせて、バーカと零す。

そして、消えてしまうとすぐ戻って来て、手のひらに油性のペンを走らせた。

〝透のものです〟

その字がくれたもの。

ぎゅっと握って胸に抱きしめると、透は一歩近づいて傘の中へ入って来た。

「帰るぞ、さみぃ」

駅に向かって歩き始める透の後を追いかけた。
/252ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ