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妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
「そうみたいだね、娘に憑いた狐も言っていたよ、日ノ本の妖魔は、礼儀をわきまえているって」
「ではなぜ、襲われたんだ? 見たところ、大谷殿や娘自体に、退魔の力は見受けられない。妖魔をつつくような真似が出来るとは思えないが」
才蔵が訊ねると、吉継は深く頷く。それから彼が口にしたのは、さらに荒唐無稽な話であった。
「長くなるが、順を追って話そう。今から十年以上前、本能寺で織田信長が討たれて死んだ。それは皆知っているね」
本能寺の変、と呼ばれているそれは、どこの武士にとっても衝撃的な事件である。日ノ本の誰に聞いても、知らない人間はいないだろう。幸村にとっても、それは家を左右する大事件であった。
「謀反人は、明智光秀。我が主君豊臣秀吉は、明智光秀を討った事をきっかけに天下への道を開いた。もちろんそれも知っていると思う」
吉継は全員が頷くのを確認すると、少しの間を開ける。
「――では、どうして明智光秀が、織田信長を討ったかは、知っているかい?」
吉継の口から語られる、本能寺の変の真実。それは、秀吉ですらこの年になるまで知らなかった闇の歴史であった。