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帝都被虐奇譚 美少女探偵助手の危険な冒険、ふしだらな願望
第8章 男子禁制の園での秘事
ここは帝都女子大のすぐそばにあるチャペル。ドイツ人の著名な建築士が築き上げた西洋式の礼拝堂は、その室内の薄暗さとは対照的に、外壁に張り巡らされたステンドグラスが宝石のように光り輝いています。一人のシスターが、慣れない所作ながらも訪れた女子大に附属する幼稚部の園児たちを優しく送り出したところでした。切れ長の瞳が高貴な人を思わす、微かにふっくらとした頬が和風美女らしいたおやかさを醸し出します。
「気をつけてお帰りなさい」
優し気な口調にも、どこか威厳を感じさせる彼女は、さる高貴な御方でした。そう、奇人五十面相が我が物にせんと付け狙う皇室の宝、近衛之宮寧子嬢、その人です。帝都警察、そして篠宮探偵は鉄仮面を弄する策として、彼女を一帝都民に扮装させ、寧子嬢の母校でもあり、素性の判らぬ者、そして何より男子の全てを排除する禁断の花園であるこの教会に隠したのでした。皇室という帝都の、いえ、日本の要でもある聖なる領域に身を置く寧子嬢ですが、そこはまだ23歳の若きレディです。表舞台では、常に冷厳とし、帝都民への公平な態度を崩さぬ至誠の御方の彼女も、我が身を匿う人々の心遣いは嬉しく思いつつ、閉門蟄居のようなこの教会での暮らしは少々退屈のご様子です。
(ああ、今日もこうしてまた一日暮れていくんだわ・・・。平穏無事は結構だけど、退屈ッ! 本当に奇人五十面相とやらは私を狙っているのかしら?)
そんなことを想いつつ、柱に掛かった大時計を見ると午後三時を過ぎたところでした。ここではシスター仲間とのティータイムが、しばしの慰めになるのです。
「シスター寧子、お子様方もお帰りになられたのでしょう? 紅茶はいかがでございますか?」
寧子嬢の期待通り、シスター仲間が声を掛けます。
「あら、その方は・・・」
寧子嬢は、ティールームへと迎えに来たシスターの見慣れぬ顔に少々戸惑いました。ここへ身を隠して一週間、シスターたちとは顔なじみになっていましたが、この大きな瞳と明るい表情が印象的な少女には会ったことがありませんでした。
「申し遅れましたわ、わたくし、篠宮探偵事務所から・・・」
「ああ、それならば結構よ、名乗らずともよろしい」
寧子嬢は、帝都の名探偵の遣いと聞き心を許したようです。
「気をつけてお帰りなさい」
優し気な口調にも、どこか威厳を感じさせる彼女は、さる高貴な御方でした。そう、奇人五十面相が我が物にせんと付け狙う皇室の宝、近衛之宮寧子嬢、その人です。帝都警察、そして篠宮探偵は鉄仮面を弄する策として、彼女を一帝都民に扮装させ、寧子嬢の母校でもあり、素性の判らぬ者、そして何より男子の全てを排除する禁断の花園であるこの教会に隠したのでした。皇室という帝都の、いえ、日本の要でもある聖なる領域に身を置く寧子嬢ですが、そこはまだ23歳の若きレディです。表舞台では、常に冷厳とし、帝都民への公平な態度を崩さぬ至誠の御方の彼女も、我が身を匿う人々の心遣いは嬉しく思いつつ、閉門蟄居のようなこの教会での暮らしは少々退屈のご様子です。
(ああ、今日もこうしてまた一日暮れていくんだわ・・・。平穏無事は結構だけど、退屈ッ! 本当に奇人五十面相とやらは私を狙っているのかしら?)
そんなことを想いつつ、柱に掛かった大時計を見ると午後三時を過ぎたところでした。ここではシスター仲間とのティータイムが、しばしの慰めになるのです。
「シスター寧子、お子様方もお帰りになられたのでしょう? 紅茶はいかがでございますか?」
寧子嬢の期待通り、シスター仲間が声を掛けます。
「あら、その方は・・・」
寧子嬢は、ティールームへと迎えに来たシスターの見慣れぬ顔に少々戸惑いました。ここへ身を隠して一週間、シスターたちとは顔なじみになっていましたが、この大きな瞳と明るい表情が印象的な少女には会ったことがありませんでした。
「申し遅れましたわ、わたくし、篠宮探偵事務所から・・・」
「ああ、それならば結構よ、名乗らずともよろしい」
寧子嬢は、帝都の名探偵の遣いと聞き心を許したようです。