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17歳の寄り道
第1章 【碧編】17歳、白川碧
「白川、待たせたな。入部はゆっくり考えてからでいいから」
「……村上先生、今の人知ってますか?」

村上先生は、ん?と眉を上げ、遠く離れて小さくなった先輩の後ろ姿に目をやる。

「小林か。スポーツ科の生徒だよ」

スポーツ科…

「部活してそうには見えないですが…何のスポーツしてるんだろう?」

私の問いに村上先生は複雑な笑みを浮かべ、入部届の用紙を丸めた。

「18時までなら、図書室も開放しているから」

村上先生は私の質問には答えてくれず、丸めた入部届でぽんと軽く頭を叩き、用紙を手渡してきた。

“帰りなさい”とは言わない、先生の優しさ。


「ありがとう、先生。さようなら」

入部届を鞄に入れて、村上先生にお辞儀をして別れた。


村上先生に言われた通り、図書室にも行ってみるが、活字を見ていたら眠気が来てしまうので、睡魔との闘いになる。
きりのいい所で切り上げて学校を出て、誰にも見つからないように公園まで歩いた。

18時、日の入りの時間が近づいているので辺りは暗く、木陰にとめてある自転車は、鬱蒼と生い茂った中にあるように見えた。
空が暗いだけで不気味。

以前から、自転車の鍵は錆びていて調子が悪かった。
手こずりながらも鍵穴に挿して、ガチャガチャやっていると、背後に誰かの気配を感じた。


…人が、いる?


一心不乱に鍵を捻っていると、やっとカシャン!と音を立てて開き、私はすぐに自転車に跨って背後を見た。


すぐ後ろに、パーカーのフードをかぶった男がいた。

すぐさま腕をつかまれて、恐怖で動けない。


怖い。怖い!


その男に自転車の前輪を思い切り蹴られ、私も自転車と一緒にその場に倒れたが、恐怖で痛みも感じない。


怖い…


腰が抜けて土の上にへたりこみ、じりじりと近づいてくる男から、少しでも逃れようと後ずさるが、その男はジャリ、ジャリと土砂とスニーカーが擦れる音をさせて、近づいてくる。

大声を出したいが、喉が詰まって声が出ない。

ついにその男が私に飛びかかるようにしてきた、その時。
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