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17歳の寄り道
第1章 【碧編】17歳、白川碧
「…ま、いいや。白川が困っていることはわかったよ。じゃあ、入部届取りに行こう」

空き教室を出て、村上先生の後ろをついてゆく。先生は足が長いから、歩くのが早い。
職員室前で、村上先生は手を出して制した。

「待っていて、すぐ取ってくるから」


先生と行き違いに出てきたのは、前に目が合った3年生。
あっ、と思っていると、その人もあっと私に気付き、「2年の白川碧だ」と、馴れ馴れしい声を投げかけてきた。

「そうですけど…」

普段、わりと笑顔でいようと努めているが、無礼者には牙を剥いてしまう。
私が警戒している事に気付いたその人は、ぐいぐい近づいてきて距離を詰めた。

「びびってんの?かわいいなー」
「……びびってません」

じろじろと舐めるような視線はセーラー服の胸に移り、慌てて鞄で胸元を隠す。
どういうわけか、平らだった胸が去年あたりからぐんぐん育っていて、今つけているブラジャーのサイズも合ってはいない。
母にも胸がサイズアップしたと言えなくて、ずっとBを着け続けている。

そういう所を気にしているから、義父がお風呂の時に洗面所をうろつくのはとても嫌なのだ。

その3年生は、まだニヤニヤ笑いながら、今度は私の顔を舐めるように見て、肩が触れるほど近づいて言った。

「碧ちゃん、遥と同じクラスだよな?」
「ハルカ…?」
「浅野。浅野遥」

ああ、と、深く納得した。
この先輩と浅野君は同じジャンルの人だ。

「浅野君…一緒ですけど」
「俺、あいつと仲いいの。今度みんなであそぼーよ」
「遠慮します」
「瞬殺かよ」

その先輩はべっと舌を出し、不満そうに両手を広げた。

そこで職員室のドアが開き、村上先生が入部届を持ち戻って来る。
先輩は、先生が来たせいか、口笛を吹きながら去っていった。
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