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17歳の寄り道
第9章 【村上編】化学教師、村上浩輔
「先生、大変だね…」

白川のその顔…
浅野、嫌われてんじゃねぇか。何言ったんだあいつ。

「可愛いとこもあるんだけどな…」とフォローを入れる。
すると、ありえないという表情で
「可愛いとこあるんですか?浅野君」と聞いてきた。

「素直な所もあるよ。あいつをちゃんと理解しようとすれば。で、お前は何してる?さっさと帰りなさい」

正直言うと、生徒が帰ろうが帰るまいが、そんなことは俺にはどっちでもいいのだが、一応教師らしく言う。
が、白川の表情が途端に曇った。

「帰りたいんだけど…帰りたくないの」

その表情に、妙な既視感を覚えながらも部活の提案などをするが、彼女は一向に納得する様子はない。
でも、だって、と繰り返す彼女。

つい、苛立ちを口にしてしまった。

「そうやって諦めて、ウジウジ後から文句言うの、嫌じゃない?」
「………」

黙られてしまった。
と思えば、白川は急に子供のように泣き出した。

この図はやばい、ちょっと落ち着くまで……目の前の空き教室を開けて、泣きじゃくる白川を中に放り込んだ。

向かい合って座り、落ち着くまで話を聞くことにした。



白川も家庭の事情か。
何も問題のなさそうな生徒だったが、そうでもないようだ。
多感な時期に、こうして自分の居場所を探している姿を見ると、胸が締めつけられる。

無意識によしよしと頭を撫でた。もちろん、全く下心などなかったのだが、白川に大きな瞳を潤ませて見上げられた時、さっきの既視感がはっきりと見えた。

…詩織に似てるな。
もっとも、詩織のほうが美人ではあったけど…

そんなことを考えている自分に苦笑する。

俺は、白川を天文部に誘ってみた。浅野も喜ぶだろうし、今のこの時期を謳歌してほしかった。
今は辛くてもきっと、今を眩しく懐かしむ日がくるから。
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