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17歳の寄り道
第12章 【村上編】自覚
その翌朝。
あんな事があった翌日だが、俺はいつも通りに学校に着いた。
校内の見回りをしていたところ、浅野が登校してきた。

「来たのか。早いな、まだ7時台―――」
と話しかけたが、俺を見るなり殴りかかってきた。

「!」

浅野の拳はヒットはしなかったが、メガネが落ち、カシャンと音を立ててひびが入った。
酷く興奮した顔で俺を睨み立ち竦む浅野を見て、昨日の痴態が知れた事をすぐに察した。

「―――すまない」

浅野を裏切った事は申し訳ない。
しかし、こいつにも一因があると思っていた俺は、もう一発殴ろうとした浅野の手を捕らえようとしたが、避けきれなかった。

頬に鈍い音が鳴り、少しよろめく。唇に痛みを感じた。

「はあっ…はあ……今度手ぇ出したらこんなもんじゃねぇぞ!」
「……そう言うなら、お前が捕まえとけよ」

ふっと笑いながら、切れた唇を触る。

なりふり構わず俺を殴りに来た浅野。
俺はもう、たとえ好きな女のためだとしても、こんな行動は取れない。

「捕まえとけって……俺はそばにいられないんだよ!」
「そばにいなくてもだ。ちゃんと捕まえとけ、バカが。不安にさせるようなことすんな」

そう言うと、浅野は整った顔を俯かせ、悔しそうに唇を噛んだ。女を連れ込んだりしていた己の過失は認めざるを得ないようだった。

「――それより、これからどうするんだ。転校するんだろ」

浅野はどうでもよさそうにしていたが、教師としてはそこは放置できないので、進路指導室に連れ込んだ。

運動場から聞こえてくる、朝連中の野球部の掛け声を聞きながら、退学手続き、編入先についてのアドバイスをした。
保護者と連絡も取らなければならない。

説明する俺を気怠そうに見て、浅野は溜息をつく。

「高校は行かねえよ。適当にするからいいよ、もう学校なんて行きたくねえし」
「高校は出とけよ。医者になるんだろ」

そう言うと、浅野は嘲笑気味に反論する。

「いつの話だよ、そんな事言ってたのはガキの頃の話だろ」
「お前は今もガキだろう」

浅野はふてぶてしくパイプの椅子に座り、足を投げ出して組んでいる。

「お前が医者、いいと思うよ」と言うと、浅野はフンとそっぽを向いた。
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