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17歳の寄り道
第13章 【碧編】春の観測会
「うるせーなぁ…お前には情けをかけて、ターゲット外にしてやってんだからいいじゃん。そのミサキちゃんは結構乗り気だったよ」

……ターゲット?乗り気?

私の後ろで震えている美咲ちゃんに、
「美咲ちゃん、先生呼んできて。誰でもいいから」と言うと、彼女は目に涙を溜めながら走りだした。


「碧ちゃん、かっこいー♪じゃあ碧ちゃんが代わりに咥えてよ」

大柄が、汚らわしい己の局部を指差しながら、へらへらと笑う。

美咲ちゃんに何させてたの…!?
ゾッと背筋が凍った。

大柄は、スマホを弄るとわざとらしく溜息をつく。

「楽しい撮影ごっこだよ。もー撮れなかったじゃんー。あの子いい顔してたのにー。ほら、早く咥えろって」

ズボン越しに自分のいかがわしいものをまさぐっている大柄。
立ち上がり、ゆっくりと近づいてきたが、小林先輩が制した。

「もういいよ、そいつは。タイプじゃねえし全然勃たねえわ」

そう言って小林先輩は柵に足を掛けて、ひらりと柵の向こうの雑木林に降り立つ。大柄も柵を悠々と乗り越えた。

「に、逃げる気ですかっ」
「バイバーイ、碧ちゃん」

大柄は腑に落ちない顔をしていたが、小林先輩たちは繁茂して手入れのなっていない草木の中に消えていった。

足は震え、鼓動はまだ早鐘を打つように忙しなく、今になってどっと汗が噴き出してきた。


最低だ…あんな奴ら。

撮影ごっこと称して、撮っているのか…
千晴と美咲ちゃんは、そのターゲットだったの…?



「―――白川!」

大きな呼び声にハッとし振り向いた。村上先生の声だ。その後ろを藤田先生、新任の堤先生が駆け寄ってきた。


「あ…先生…」

村上先生は、それは心配そうな顔をして私を見つめる。


「何もなかったか?」
「はい、私は……」

すると、藤田先生の低音が耳に飛び込んできた。

「――小林か?」
「はい、あと体格のいい人が…」
「平沼だな」

藤田先生も村上先生と同じように、深刻そうに溜息をつき、身を屈めて地面に落ちていた吸殻を手に取った。

「バカだなぁあいつらは……」

本人たちは単なる遊びかもしれないが、全国に報道される事件にもなりかねない、学園の継続が危ぶまれるような出来事に、そこにいた全員が言葉を失くし、卑劣さに落胆した。
なにより、一人の女子高生の未来を潰しかねない。
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