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17歳の寄り道
第14章 【碧編】自立の階段
「小林先輩!?」

まさかこんな所で遭遇するとは思わず、頭の中は真っ白だ。先輩はお店の前のバイク置き場に自身のバイクを置いた。

「っ…、美咲ちゃんの動画消してくださいね!」

詰め寄るが、半ば呆れ顔の先輩。
そっちが悪いのになぜ呆れられないとならないのか実に苛立たしい。

「撮れてねーよ。ビビり倒してたしな」
「本当ですか!?」
「ああ。学校の女は撮れてねえよ」

学校の女?
引っかかる言い方をされるが、見せてもらわないと気が済まない。家にバックアップがあるかもしれないけど、まずは先輩のスマホを見ないと…

「スマホ見せてくださいっ」
「見たいの?ほらよ」

先輩がやけにあっさり見せて来たそれは、結愛ちゃんのしなやかな肢体が、浅黒い男の上で跳ねている姿だった。
喘ぎ声までが聞こえてくる。

「ひっ……」

私が息を飲むと、先輩はニヤリと笑って動画を止め、スマホをポケットにいれた。

「それ、誰が撮影を…」
「うっせえな。俺の女だからいいんだよ。それより、遥消えたな」

消えたという言い方にムッとした。
が、小林先輩を見ると、その表情には陰があって。
もしかして、先輩も寂しい?

「別れたんだろ?傷心なら男紹介してやろっか?」
「いらないですよ、遥とはずっと続いていくんです」

そう答えたら、びっくりするぐらい小林先輩は穏やかに目を細め、煙草を取り出した。
あの深い青のソフトケースから一本。
シュボッとライターの音がする。

「昔体育館裏で、遥もたまに参加してたんだぜ。まあ、見てるだけだったけどな。チキンだから」
「え…」
「ターゲットに碧ちゃん推したら、遥が反対したの」
「……」

すると、握っていたスマホが震え出した。遥からだ。
煙草を吸う小林先輩を睨みながら、慌てて電話に出た。

「あっ、もしもしっ…遥?今ね、…」

小林先輩は私をトンとたたき、首を振った。
『碧?』と心配そうな声がスマホから聞こえる。

「……ごめん、何でもない。…遥、今、何してるの?」

先輩は吸い殻を捨て、コンビニに入って行く。
私は、そんな先輩の後ろ姿に一礼し、遥と話をしながらバス停まで歩き出した。

最低な人だけど、どこかで憎ませてくれないその雰囲気は、遥に通じるものがある。
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