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17歳の寄り道
第14章 【碧編】自立の階段
美咲ちゃんは大事に至らず良かったが、結愛ちゃんのことは…彼女が納得しているなら口出しすることではないけれど、きっと、遥はその事実を知っているから、結愛ちゃんを放っておけなかったのだろう。

そう自己完結をしてみたが、靄が晴れるには時間がかかりそうだった。

――もしかして…公園でのパーカー男も、あの大柄の先輩だったのかな?

いや、それだと遥が気付くか……


考えても答えの出ない問題を解いている気分になり、頭から振り払った。
もう、あの公園には行かないから、あんな危険に遭う事はない。

忘れていいのだ。あんなことは。


遥もバイトを始めるそうだ。
学校も、私立高校に転入するらしい。
遥のおばあちゃんの強い勧めだそうだ。

『来週からだって。だりぃー。自己紹介とかすんだぜ』

「モテないでね…」

『男子高だよ、バカ』

耳から聴こえる遥の声は、私の心のとげを温かく包んで、まあるく保ってくれる。
会っていないのに、遥を想う気持ちは前よりずっと強い。


「ただいまぁ」

バスを降りて家まですぐ。
玄関のドアを開けると、無表情で義父が立っていた。

「……あ、ごめんなさい…遅くなって」
「心配してたんだよ。ちゃんと家に連絡をいれなさい」
「はい…今度からします」

ヒモ男が父親のようなことを言うが、心の中は嫌悪感しかない。しかし、バイトを始めるにあたり、機嫌を損ねて反対されたくない私は、したたかに、殊勝に謝った。

「…あれ?お母さんと凛太は?」
「残業らしい。凛太は延長保育だそうだけど、もう帰ると連絡があったよ」
「そう……」

母の職場の近くの保育園は、20時まで預かってくれる。
が……義父って、家にいるとほとんど何もしていないように見える。

「食べなさい。お母さんが作ってくれてるから」

ご飯は、本当は私が作ってあげたい。でも、義父と一緒にいるのはやはり堪え難いものがある。

ソファに座る義父を斜め後ろから見、冷蔵庫に入ったサラダと鍋のシチューを温め直して、母もすぐ食べられるようにした。

途中から、義父のじっとりした視線に気づいていたが、負けるものかと半ば開き直ったように、大口を開けてシチューとサラダを完食した。

絶対に義父に屈しない。
卒業したら、ここを出て行くんだ。それまでは負けない。
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