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17歳の寄り道
第15章 【千晴編】17歳、須賀千晴
ずっと怒ってるし、脳ミソも筋肉でできてそうなイメージだったけど、バスの中ではイヤホンをして目を閉じている。
音楽なんて聞かなさそうな、この男が。

「何聞いてるんですか?ラジオ?」
ひょいっと覗き込むマネをしたら、鬱陶しそうに私を避ける。

「……ハズレ。俺の事はいいから勉強しろ」

どんなものかぐらい教えてくれてもいいのに。お笑いでも聞いてんのかな?…にしては、ずっとむすっとしてるしなー。

みんなに恐れられ(嫌われ)ているこの男が聞いているものは何なのか。
それが、藤田先生に興味を持ったきっかけ。


先生は見た目が怖いから、バスもいつも先生の隣が空いていた。
ずっと立ってるのは疲れるし、思い切ってそこに座ったら、その日からずっとそれは続いて、先生の姿を探しながらバスに乗り込むようになった。



あれは去年の冬、1年生だった時のこと。
マフラーを巻いてバスに乗り、いつものように先生の隣に座った。

先生は腕組みして窓ガラスに頭をくっつけて寝ていた。
その隣でマフラーを外していると、イヤホンのコードに引っかかって、先生の膝に左のイヤホンか落ちて。

「すみません、落ちちゃった…」

白いイヤホン。最初からiPhoneについてるやつ。拾い上げても先生は無反応。


先生……まだ寝てる。

……何聞いてるのかな。


そっと右耳に当ててみたら、聞こえてきたのは繊細なピアノの旋律。

これはリストかな?
高校受験前までピアノを習っていたから、一応曲はわかる。

ピアノ、かぁ……意外すぎる……




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