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17歳の寄り道
第15章 【千晴編】17歳、須賀千晴
「返せ」

いつの間にか起きていた先生が、私の手からイヤホンをひったくった。

「先生、意外ですね」
「フン。……好きなんだよ、昔から」

照れているのか、藤田先生は私と目を合わせない。

なんか、私…嬉しい?
自然と顔が緩んでしまう。

「クラリネットも好きですか?」
と尋ねたら、イヤホンをまたつけ直しながら、頷いてくれた。

「ああ、いいな。部活中はいつもブラバンの音聞いてる」
そうなんだ…サッカー部指導しながら聞いてるんだ…
ふふ。かわいいじゃん。

「もういいか。お前も勉強あるんだろう。続きをやりなさい」
「はい」

私のクラリネットを聴いてくれてるんだ。
こんなガサツで厳ついアラフォーが……

私は鞄から暗記カードを取り出したが、先生の意外な面を知れたのが嬉しくて、ずっとにやにやしていた。




そして―――2年生に進級した今年の春。
部活で遅くなった日のことだった。

「千晴、先輩が呼んでるんだけど。体育館裏だって」

同じクラスの東野君が、帰り支度をする私に声を掛けてきた。

「体育館裏?……どこ?先輩って誰?サッカー部の先輩?」
「ううん。俺は千晴を呼んでって言われただけだから、わかんないんだ」

体育館裏なんて行ったこともないし、そもそも誰が私を呼んでんの?
告白ならすっぽかしたいな~。いちいち噂立てられんのも面倒だし。初対面ならまずOKはしない。てゆうか、彼氏いるし。

碧が言っていた男子校マジックとやらの影響で、2年生にもなると、告られるのは珍しいことではなくなっていた。

どうしようか迷っている間に、一緒に帰るはずのブラバンメンバーは帰ってしまい、東野君も帰ってしまっていた。

……仕方ない。ちょっとだけ覗いて帰ろう。
そうして、鞄を片手に体育館裏まで歩いて行ったら、体育倉庫の裏口でばったり藤田先生に出くわした。
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