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17歳の寄り道
第18章 【碧編】碧の夏休み
そういえば。
小林先輩たちの話は知っているのだろうか。
退学したことも……

その話をしようか迷っていると、遥が立ち上がった。

「あっ、あぶねっ」

ちょっとした段差に躓き、こけた凛太に、遥が駆け寄る。

「いた~い~」
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ。このぐらいなら」

膝についている砂をぱんぱんと払うと、すりむいただけで血も出ていない。
遥はおろおろしながらも「一応洗うか」と、凛太を水道まで連れて行く。

……すると、凛太はもう笑っていて、二人で水かけごっこが始まっていた。

遥の優しさに、また新しい愛しい気持ちが芽生える。
会ってしまうと、離れたくないなぁ…。
もうすぐ帰ってしまうのに…。


「なんか、凛太テンション高すぎね?」

凛太を小脇に抱えて戻ってきた遥。

「眠たいのかも。昼寝の時間かなぁ…。まだ保育園ではお昼寝あるみたいだし…」
と話していたら、凛太はそのまま遥の腕の中で寝てしまった。

「寝た…」
「電池切れたな」
「……遥は、新幹線の時間は……?」

聞くと、遥は時計を確かめながら、凛太を抱き直す。

「今3時か。発車は6時だから、うちまで送ってやる」
「えっ」
「こんなの抱えて電車乗るの、きっついだろ?」
「………」
「ってゆーか、もうちょっと一緒にいたいだろ?」

…うん。
もうちょっとだけ、一緒に。



家まで凛太を送り届けた。

バスに乗り換える頃には凛太は起きていて、「はるくんもおうちくるの?」とわくわくしている様子で、バス停で別れる時は、遥の方が寂しそうだった。

義父は家にいた。
凛太だけ家に上げて、私は靴を脱がずに
「もう少し友達と遊ぶので、夕方には帰ってきます。」
と告げ、遥の待つバス停に、足早に戻った。

遥と離れる時間は、一秒でも惜しい。


停留所の小屋の中で、遥が足を投げ出して、この田舎の風景を無表情で眺めている。
どんな思いで眺めているのか、声をかけていいのか少し戸惑った。

「―――なんだよ。無言で。家の人いたの?」
「へへ……うん。いた」

私も遥の隣に座った。
雨避け小屋のような、簡素な作りの停留所。椅子の数は4つほどだ。
扇風機が一台回っているが、涼しさには貢献していない。
先程バスが出たようで、他には誰もいなかった。
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