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17歳の寄り道
第19章 【碧編】予兆
母と帰宅すると、凛太は一度起きて、また寝たようだった。
……そして、義父から漂う酒臭さ。

最近お酒の量が増えているのは知っていた。
私の下着を漁りには来なくなっていたが、母が忙しくしているのが寂しいのか、気に入らないのか、日中から飲んでいる事もしばしばある。
元々そういう生活で、夏休みになって私が気付いただけなのかもしれないが。


その晩は、私が洗濯機から洗濯物をカゴに移していると、リビングで言い争うような声がし、一瞬時間が静止した。
が、そのあと母の艶めかしいの声が聞こえ、舌打ちしたい気持ちになった。

こんなにあからさまに聞こえるようにするなんて、おかしい。
母は……酔った父に逆らえないんじゃないだろうか。

夜は、望ましくない方向へ妄想を加速させる。


カゴに入っている父のパーカーをヒステリックに広げ、ハンガーに掛けて乱雑に干す。
その程度の事でしか、憂さを晴らせなかった。

しかし、パーカーって。この暑いのに。
どうせパチンコ屋の空調が寒いんだろうけど。


覚えのある息苦しさを感じながら部屋に戻り、買ってきたプリンを開けながら、遥が映る動画を再生した。
口に広がる甘さにふうっと肩の力が抜けて、心が優しく満たされる。

スマホの小さな画面で、遥が笑っている。
今日のバス停での衝動を思い出して苦笑した。


あんなとこでエッチをねだってしまった。
さすがの遥も動揺してたな。

少しずつ積み重ねる思い出は、私の心を強くする。
もう、誰かに縋らなくても大丈夫だ。

一週間後には、遥の街に会いに行ける。
私の未来は、遥と共にあるんだから―――。


そう決意し、遥に会いに行く予定だった、8月の初め。


状況が一変した。
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