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17歳の寄り道
第20章 【碧編】窮地
枠に足を掛けて、裸足のまま物置の上に飛び降り、庭に降りる。
義父はまさか窓から逃げ出すとは思っていなかったようで、しばらく呆然と私を見下ろし、すぐに私の部屋を出て階段に回ったようだった。

追いかけてくる…!?

凛太が残っているのが気がかりでならなかったが、とにかく身の危険を感じた私は、道路に向かって走り出した。


全力で走りながら、充電の切れそうなスマホを見ると、遥と通話がつながっていた。

『おい!何かあったのか?』

耳に当てると、遥の声が―――。


「は、はるか…」

『どうしたんだ?こんな遅く…もうすぐ3時だぞ』

「おっ、おとうさんに…襲われる……っ」


涙が次から溢れて言葉にならない。
遥は続けて何か私に話しかけるが、動転していた私は何も答えられず、かろうじて答えられたのは、今国道沿いの道にいることだった。

『そこにいろ!どっか店…は、ねえな、あの辺りは。ちょっと待ってろ!』

すぐに電話は切れた。
震えながら、裸足で走り続けた足を見ると、傷だらけになっている。
飛び降りた時に挫いていたのか、ジンジンとした痛みもある。

流れる涙を拭く事もできず、その場に力なく留まっていると、また手の中のスマホが鳴りだした。

“村上 浩輔”

先生からの着信に、慌てて電話に出た。

「先生…!」

『話は後だ。国道のどこあたり?今から車で行くから』

場所の説明をすると電話が切れ、ついに充電もなくなってしまった。


8月のこの夜もうだるような暑さだが、流れる汗は恐怖心からのものでしかなく、もうその場に立っていられなかった。

足が痛い。
息が……できない。

先生の車が来るまでの数分が、途方もなく長く感じた。


私の目の前で、シルバーの車が止まる。
何度も乗せてもらった、村上先生の車だ。

「……白川、大丈夫か」

その場に座り込んでいる私の前に、村上先生が片膝をつき、俯く私の顔を覗き込む。

「凛太置いて来ちゃった…」
「凛太?」
「弟を、置いて来ちゃった……」
「お父さんは弟にも危害を加えそうなのか?」
「……実の子だし、男の子だし…凛太には…何もしないと思うけど、おとうさん酔ってるから……」
「……わかった。何とかする。………怖かったな」

村上先生は、震える私に手を差し伸べ、ペットを撫でるように、私の頭を何度も撫でた。
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