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17歳の寄り道
第21章 【碧編】夏の幻
「……凛太。大丈夫なんだよ。おねえちゃんいるし、はるくんも来るから……。それに、村上先生は本当にこわくないよ。私と凛太を守ってくれたんだから。おねえちゃん、先生大好きなの」
「…………でも、あのおじさんこわかったよ。かお、おこってる…」


顔か……

……それは元々だな…。

しかしおじさんって……。


凛太を膝の上に抱き、なだめながら検温する。
腕から伝わる体温はやはり高く、やっぱり熱い。

「39℃か…高いなぁ…」

夏風邪かなぁ。
先生の家の近所だと、小児科はどこにあるのだろう。
どちらにせよ、私一人じゃ凛太を受診させることもできない。

再び凛太を布団に寝かせ、私も横になった。

そして、母のメールを開封すると、
『お父さんにはお母さんから話をしたから、もう心配しないでね。』
と書かれていた。

母と義父は、どんな話をしたんだろう。あんな状態の父と、話になったのだろうか?
義父の所在を尋ねたかったが、もう母の仕事は始まっているだろうし。

考えていたら、またフラッシュバックが来そうだ。
せっかく先生が落ち着かせてくれたのに……

凛太が発熱している事だけを返信し、義父については触れなかった。



いつのまにか凛太を抱きしめて眠っていた。
家の前に車が戻ってきた音で目が覚める。
……遥と先生の声がする。

また眠りについた凛太を起こさないように注意を払いながら、這って客間を出た。

「……碧!」

玄関のドアが開いていて、そこに遥が立っていた。村上先生は後ろから歩いてきている。

「センセーに聞いたけど……足は大丈夫かよ?凛太の熱は?」

遥が慌ただしく上がり込み、ドサッとバッグを廊下に置いた。

「今、寝てる……遥…ありがとう……」

先生に連絡してくれたのは遥。何時間も掛けて、会いに来てくれたのに……。
遥を裏切ってはいないつもりだが、明け方見た先生との夢がふと過り、気が咎める。

遥の顔が見られない……。

そんな挙動不審な様子に気付いていないのか、遥が私の足元に近づいた。

「………何これ、めっちゃ腫れてんじゃん。折れてる?」
「…ど、どうだろ?痛いけど、我慢できる範囲だよ」

足。
昨日より腫れてる……よね。
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