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17歳の寄り道
第22章 【遥編】17歳、浅野遥
『………浅野か?何だ、こんな夜中に……』

オッサンの寝起きの声、しかもあくびつきなんて聞きたくねえけど、必死で説明を始める。


「碧がオヤジに襲われかけて家飛び出して、今一人で国道沿いにいるんだよ!」

『えっ??どういうことだ!?』

普段はリアクションの薄い村上も、流石に驚いていた。

「……センセー、あいつ助けてやって…!頼むから…!!」

情けない声で懇願する俺に、村上は「わかった」と答え、電話が切れた。


手が……手が、震えてる。

震える両手を強く握り、ぐしゃぐしゃと髪を掻き回して、はあっと溜息を吐いた。


……あいつが困ってる時に、何もできない。

今もあんな場所で、一人でいるのに……俺は助けてやれない。
今から駆け付けようとしたって、電車も新幹線も動いてはいない。


村上から連絡が来るまでの間―――いや、正しくは碧に直接会えるまでの数時間は、自分との戦いだった。

碧を心配する気持ちと。
碧を信じ切れない自分と、信じたい自分と。
村上への嫉妬が織り混ざって、汚い自分が見えてくる。


明け方に一度村上から連絡があったが、込み入ってそうな状況に、俺の嫉妬なんてくだらない話はできず、「始発で行く」とだけ伝えた。

全く眠れず朝を迎えた。
まだ暗いうちから始発は出ていたが、新幹線に乗った頃には空も明るみ、一日が始まっていた。

今日は、晴れか。
暑い一日になるんだろうか。

村上からは『こっちは大丈夫だから安心しろ』『駅に着いたら迎えに行く』 とメールが来ていた。

安心できるわけねぇだろ。村上には前科があるからな。
…でも、きっと碧は村上が来た事で安心してるはずだ。


朝の光が燦々と 降り注ぐ窓を、睨むように外を眺める。
遠距離でも、碧を不安にさせないように大事にしているつもりだけど…。これが正解なのかは俺にはわからない。

………はあ。
まあ、いいや。今は。
あいつの無事を確認できれば、何でも。



ヴー、と膝の上でスマホが動く。
開封すると、村上から『浅野もちゃんと寝ろよ』というメールが届いた。


浅野、な。
17年間呼ばれ続けたその名字は、今の街で呼ばれることはない。

それに、意外と俺は神経質で、こんなところじゃ寝れねぇんだ。
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