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17歳の寄り道
第25章 【遥編】ノスタルジー
俺の戸惑いに気づいたのか、村上はすぐにいつもの様子に戻った。
そして質問はなかったかのように、俺に尋ね返す。

「……昼飯はどうするんだ。食いに行くか」


話を変えられたことで、ほぼ確信するに至った。
村上は、今も…


「ああ……連れてってくれんの?」

「ついでに実家まで送ってやるよ。寄るんだろう」


前の家の鍵は持たされたままだ。
父親に渡そうとしたら、『ここは遥の家だから持っておきなさい』と断られた。捨てようかと思ったけど、捨てきれずに何となく持っている。

「実家に入るかどうかはわかんねーけど。あの辺散歩して帰るよ。寄りつきたくもなかったけど、気が変わった」

「ああ。いいんじゃない」

村上の表情はすっかり元に戻っている。
さっきのは何だったんだ…


また灼熱の車に乗り込んだ。

村上の家に上がったのは今回が初めてではない。
1年の時に、両親がひどい喧嘩をして、罵倒し合うのに耐え切れなくなり、バイクで飛び出したことがあった。

家を出たのはいいが、小林先輩と馬鹿騒ぎする気力はない。
情けないが、誰かと話せば涙を見せてしまいそうだった。

でも、家に居場所はない。
その時に村上から、たまたま入ってきたメールに、「家に帰れない」と返信して…家にあげてくれた。


その時も村上は親に連絡を入れてくれて。
親の前では泣けない分、あの夜も村上の前で泣いた。

大袈裟に慰めたりしない。
「今ここで泣いとけばいい」とティッシュの箱を渡すぐらいだ。

照れ臭くて口には出せないが、村上には数え切れないほど世話になり、こう見えても感謝している。


だから、……ちゃんと俺に向き合ってくれよ。
俺に嘘は吐くなよ。


ハンドルを握っている村上に、再度尋ねた。


今度は聞き方を変えた。

「センセー、碧の事好きだった?」



村上はもう慌てることもなく、静かに頷く。

「……好きだったよ。」
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